
大きなホールでジャズを聴くのは初めてだった。
予想はしていたが、開演前の注意事項がやたらに念入り。
携帯切れ、バイブもアカン、液晶光らすな。これはまあ通常だけど、
撮影や録音は絶対にやめろ(絶対に、という語は私の経験では初めて)、
さらには演奏の余韻が終わるまで拍手や歓声は控えろと。
高校のとき、音楽の担当でものすごくセンシティヴな先生がおられ、
私ら生徒は物音ひとつにも神経をとがらせたものだったが、
あの緊張感を久しぶりに思いだした。
場内に目を光らす係員の皆さんのピリピリ具合もハンパなかった。
同行の夫は学生時代に、キースのやはりソロ・コンサートを聴いたそうだ。
こんなだった? と訊いたら首をかしげていた。
携帯等が無い時代のことだから、いまよりは楽なムードだったんだろう。
それはそれとして、演奏者にとっても聴く側にしても「余韻」は当然のことである。
曲の終り、ピアニストはゆっくりと鍵盤から指を離し、
両腕を椅子の脇へ下げて深く深くうつむく。
完全にうつむいてから3秒は待とうよと思うのだが、
私の感じでは、ほぼすべての曲終りで拍手が早かった。
いちいち胃が痛くなってしまって、ちょっと困った。
ここで話に出すのも変だけど、私はピアノの発表会に出たことがある。
舞台に上がると、毎回正気をなくした。
頭は真っ白、まぶしくてまぶしくて、指先も足先もふわふわして、
その日まで練習したことなんて、すべてどっかへいってしまった。
プロの人はきっとまた全然違う部分で緊張するのかもしれないが、
ともかく、ああいう孤立無援の状況で演奏(しかも即興)をするなんていうのは、
それがお金を取れるレベルのものであるというのは、
やっぱり普通の人間にできる業じゃない。
普通の人の顔をして実は普通でない人が、この世には沢山いるのだ。
最初から普通でない人も、努力の末に普通でなくなる人もいるが、
結局は、普通でないものを持ってる人だけが普通でなくなれるんだと思う。
アンコールは5曲。
「Don't Ever Leave Me」は、うちのデッキにほぼ入りっぱなしの
『The Melody At Night,With You』の3曲め。
それから「Summertime」。
1曲弾いては袖に引っこみ、途切れない拍手に応えて再び登場、
弾くのかと思ったらまた引っこみ、それでも拍手止まず、もう一度出てきてやっと弾く。
そんなのが30分以上も続いただろうか。アンコールはいつも長い人らしい。
皆さんそこまで手叩かんでも、と実はちょっと白けていたのだが、
焦らしに焦らしたアンコール3曲め、「I Loves You, Porgy」に涙腺崩壊。
次は、題名がわからないが、超速弾きのラグタイム。
そしてラストが「Over The Rainbow」。
メインは即興演奏で、それはもちろん素晴らしかったものの、
私としてはやはりCDで馴染んできた曲を生で聴けたことがうれしかった。
この8日に日本で67歳のバースデーを迎えたキース・ジャレット。
来年はトリオでいらっしゃるそうだ。
また行きたいですよ。ちょっと胃が痛いくらいはガマンしますよ。
てか、トリオなら注意事項もちっとはゆるくなるのかしら。
できればブルーノートで聴きたいけど、無理な相談なんでしょうなあ。
2012.05.13 Sunday
キース・ジャレット・ソロ 2012










